金村曉(北海道日本ハム)

まもなく2006年も終わる。来年2月のキャンプインを見据え,今年の日本プロ野球12球団の中で象徴的だと思われた選手を1名ずつ独断で選び出し,「12球団このオトコこの一年」と題して遺していくこととする。

まず今年日本一に輝いた北海道日本ハムファイターズからは,新庄でも森本でもなく「金村曉」を選んでみた。それはファンなら誰もが知っている2つの出来事からである。

1つは4/16の福岡ソフトバンク戦において,内角のきわどい投球でズレータを怒らせ,暴行を受けたという件である。

実はこの2日後に新庄剛志が東京ドームでの試合後に引退宣言を行ったことに大きな反響が向かい,事件が起こった当初のみ大きく注目されていた感があるが,私が思うに,ファイターズベンチをより発憤させた出来事は新庄ではなく金村だったのではないか。

というのは,私もキャンプを見に行ったときも,新庄を中心に明るい練習風景が印象に残っているもののどこか緊張感に欠けていた。ヒルマン監督が「今年はスモールベースボールをやるらしい」との情報を得て注目はしたが,それでもプレーオフ進出は厳しいと予想していた。また,2005年の対戦成績を見るとソフトバンクに対し10の借金があり,ここで収支改善が進めばおのずと3位確保は見えてくる。

後者のほうは後付けに過ぎないが,相手がたまたまソフトバンクだったこともあってベンチ全体にもしばらくは「ソフトバンクには負けられない」という気概があったに違いないし,結果的に今季4つの勝ち越しを得たのは大きいと考えられる。

もう一つの出来事は9/24の千葉ロッテ戦,金村は先発し4回まで好投していたが5回につかまり,大きなピンチを招く。ここでヒルマン監督は金村の降板を命じ,後続した投手は打たれゲームは負け。シーズン終盤の負けられない試合だったことと,何より金村自身が4年続けていた2桁勝利が止まったことで試合後ヒルマン監督を痛烈に批判。後日謝罪するもチーム内で重い処分が下された。

たまたまこのシーンをテレビで見ていたが,2アウトでピンチを背負った金村にコーチが寄ってきたところから雰囲気はおかしかった。降板するその途上も,悔しさ不満を隠すことはなかったように記憶しているが,まさかその後に監督批判が行われるとは衝撃的であった,

大事な時期にこういうことが起こればチームは一気に崩れるかその逆かである。金村事件の当日に敗れはしたものの,翌々日に行われたソフトバンク戦には八木→武田久→マイケルの完封リレーで圧勝しソフトバンクの3位を決めさせた。この一勝にちーむそして金村が誰より救われただろう。

そして日本シリーズでの熱投。いろいろあったシーズンの総決算とばかりにふっきれた姿がそこにはあった。

自らファイターズのエースであることを自負しているようだが,実際は次々に入ってくる即戦力の若手によりその座はあやしいものになっている。しかし今季見せてくれたこの精神力はチームにとって今後必ずや不可欠なものになるであろう。そういった意味でも2007年は大きな勝負の年である。

…ここまでいろいろあった選手が他の11球団にいたかどうかわからないが,2006年を振り返るにふさわしいまとめにしていきたい。